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事業者インタビュー 海老仙

静岡県浜松市は浜名湖や天竜川に代表される、豊富な水資源に恵まれた地域です。
浜松市の数ある水産物の中でも、徳川家康を始めとした多くの武将の活力源であったと言われるうなぎ。
創業90年の老舗・海老仙では、浜名湖の環境を守りながら肉厚で程よい脂の乗ったうなぎを育てています。
今回は株式会社海老仙の代表取締役・加茂 仙一郎さんに、おいしいうなぎを育てる秘訣と、うなぎの保護事業についてお話を伺いました。

-他の地域と比べて、浜松はうなぎを育てるのに適した環境なのでしょうか?

浜松は比較的温暖で、雪が降るのも一年に1,2回という環境です。
そうした、暖かくて日照時間が長い環境は、うなぎの養殖にはとても適してると思います。

-浜松ではなぜうなぎが盛んになったのでしょうか?

1つは歴史的な背景もあるようです。
浜松には浜松城があり、徳川家康がまだ若かりし頃に陣地を構えた場所でした。
そして浜松町から出世をしていったということで、出世城とも言われてます。

その家康公が長生きをされたということで、家康公が当時この地で食していたものが調べられました。
その結果分かった食材を集めてリストにしたら、うなぎがあった。このことがうなぎが盛んになっていった始まりのようです。

そのリストにおいて、うなぎ以外にはスッポンなど「体に精がつく食材」も多くありました。
そこで、最近ではその他の地域資源であるものも含めて、浜松市が「浜松パワーフード」として全国に広めるプロジェクトなどもあるんです。

-浜松では他に、昔から「織物」が有名であったとも伺いました

昔からこの地域は綿花の産地だったこともあり、機織り・織物の工業が非常に盛んでした。
同時に、織物に必要な「蚕」を作っていたということで、当初は糸を出した後の蚕をうなぎの餌に使っていたということです。

もう一つ浜松で盛んとなったのが、「メッコ漁」ですね。
「メッコ」とはうなぎの稚魚のことです。

うなぎのメッコが「マリアナ海溝」から浜松近辺に遡上してきたものを、すぐ池入れしやすいという環境も合致して、養鰻業が盛んになっていきました。

-うなぎを育てる池の水質について教えて下さい

池の水はいわゆる「真水」です。 
地域ごとで井戸を掘ってみて出る水質や温度などは違いますが、甘い水というか、栄養価の高い水がうなぎを育てるには適しています。

5〜6年同じ池を使い続けると水にもうなぎにも影響があるので、池を休めながら順番に使っていく手法を取り入れているんです。

-海老仙さんのうなぎのような、肉厚で脂が乗っているうなぎに育てるためにどんな工夫があるのでしょうか?

水の中でえら呼吸をしているうなぎなので、池上げしてから陸送する際にストレスを感じてしまいます。
そのストレスを解消するためにも、うなぎを「立てる」という作業をします。
「立てる」とは、簡単に言うとうなぎを流水にさらし、うなぎの内臓の中をきれいにして身を締めることです。

専用の容器に上から井戸水を流して、そこに大体20匹ぐらいのうなぎを入れます。
約2〜3日ぐらい流水にさらし、うなぎのストレスを解放させるんです。

それから職人がうなぎを裂き、身が生きてるうちにすぐ白焼きに焼き上げます。
いくら良いうなぎでも、鮮度が命なんです。この作業をすると、うなぎの身がぐっと締まります。

身の締まったうなぎは、甘みやコクなど、うなぎ本来の旨味成分が凝縮された状態になります。
すると、焼くと外がカリッと、中がふわっとしたおいしいうなぎになるんです。

そしてもう1つ、提供するお店に最適なうなぎを選別する、ということも大事にしています。
同じ池で同じように育っても、実はうなぎによって成長の度合いは様々です。
池の中でも生存競争があって、餌をいっぱい食べて動き回るうなぎは短い期間に太くなって脂が乗りますが、餌を食べれずに太くならないうなぎもいます。

ですのでそこから選別をして、それぞれのうなぎ屋さんに最適なうなぎを提供しているんです。
そうすることで、お店の焼き方や味に合った美味しいうなぎを食べて頂けます。

そのために、常に4~5人の職人がうなぎを触って、太さや柔らかさを見ながら、選別をしているんですよ。

-ふるさと納税では、一般のお客さまに直接うなぎをご購入頂くにあたって、意識していることはありますか?

まず焼き上げたうなぎについては、焦げ目や傷のないものを選んで提供しております。
あとはサイズですね。大体5本で合計1kgのもの、生のうなぎでいうと1本200gほどのものを提供させて頂いています。

実はこれはあまり大きいものではありません。
では何故このサイズかというと、あまり太いものだと骨が多くなってしまうからです。
お子様やお年寄りの方でも食べやすい大きさを意識しています。

浜名湖うなぎ

-ふるさと納税が始まってから、変わったことはありますか?

今まではどちらかと言うと、お世話になった人達に配る贈答用にうなぎをご購入頂く方が多くいらっしゃいました。
ですが、ふるさと納税ではご自分のために購入されるお客さまが多いですね。
ですので、うちとしてもお中元などの繁忙期以外に商売をさせて頂けるというのは非常にありがたいと思っております。

-他にも、浜松のうなぎを育てるための取り組みをされていると伺いました

はい。飲食店や漁業協同組合と一緒に、うなぎの稚魚を保護する事業を始めました。
というのも、うなぎの値段が高くなってしまった原因の1つが、稚魚の減少だったからです。

最近はうなぎの値段が高くなってきていますが、実は10年~15年前はこんなに高くはなかったんです。
稚魚の取れる量が非常に減ってきて、値段が高騰しました。

稚魚の値段が高いと、「成鰻」と言って大人のうなぎになった時にそれが原価になるので、うなぎの価格が高くなってしまいます。そこで、私たちは稚魚をこれ以上減らさないための保護事業を始めました。

はじめは私たちのような問屋業と飲食店さん、浜名漁業協同組合の三社で自発的に始めました。
それでも活動を始めて3年ほど経った時には、これ以上稚魚が減れば絶滅危惧種としてワシントン条約で貿易規制されてしまう可能性すら出てきました。

そこで私どもがやってきた保護事業の重要性について静岡県や浜松市、国からも理解して頂き、支援して頂けることになったんです。

私たちもやはり三社でやるだけではなかなか皆さんに知ってもらうことができないので、とてもありがたかったです。そうして官民合わせた事業になりました。

初めのうちは漁協関係や養鰻業の方々にもなかなか浸透していませんでしたが、今ではそれぞれうなぎに関わる関係者たちが一致団結してきています。

浜松市のみで取り組んできたものが、静岡県全体に浸透し始めているということです。
更にうなぎ関係者以外の方々にも色々補助して頂いて、今年度については過去最高の放流本数となりました。

このうなぎがマリアナ海溝まで行って、子供を産んでもらって、海流に乗ってこの日本海域に来てくれればありがたいな、という想いで活動させてもらっています。

かつては名将・徳川家康も食して精をつけたとされる、浜松うなぎ。
今でも浜松市を代表する「パワーフード」として多くの人に親しまれています。
老舗・海老仙ではうなぎをおいしく育てるのはもちろん、年々減少しているうなぎの稚魚の保護事業にも積極的に取り組んでいます。

目先の利益を追求するのでなく、地域の問題と向き合う姿勢からは、うなぎに対するこだわりとともに、浜松市への愛情を強く感じました。
貴重な資源から大切に育てられた海老仙のうなぎを、じっくりと味わってみて下さい。

浜名湖うなぎ

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